当院の理念
月経異常(月経不順、生理痛、月経前症候群など)
<<無月経、排卵障害>>
 無月経は婦人科外来を受診される患者様の疾患の中でも非常に一般的なものです。若年者から高年者までさまざまな理由で無月経をきたします。無月経にはいくつかの分類があります。まず下記にそれを上げます。

 分類にはいろいろありますが一般的なものを挙げます。

分類1、原発性無月経と続発性無月経
原発性無月経:満18才になっても初経がないもの。
原発性無月経の頻度は比較的少ないですが、中には染色体異常によるものも多く、治療困難です。
続発性無月経:月経があったものが途中無月経になったもの。ほんとうにさまざまな原因が存在します。

分類2、中枢性無月経・卵巣性無月経・調整失調性無月経・末梢性無月経
(中枢性無月経)視床下部、下垂体の機能的または器質的障害
A)視床下部の機能障害によるもの
anorexia nervosa(神経性食欲不振症)や体重減少性無月経など
B)脳下垂体の機能低下のよるもの
Sheehan症候群やSimmonds症候群など
C)高プロラクチン血症によるもの
Forbes-Albright症候群やChiari-Frommel症候群など
(卵巣性無月経)卵巣の機能的および器質的障害
Turner 症候群、Stein-Leventhal症候群、男性偽半陰陽など
(調整失調性無月経)内分泌機能異常(副腎皮質や甲状腺)
副腎性器症候群、Cushing症候群、代謝機能異常など
(末梢性無月経)子宮および腟などの異常
腟閉鎖、処女膜閉鎖、子宮腔内癒着(Ascherman症候群)
分類3、第1度無月経と第2度無月経
第1度無月経:黄体ホルモン投与により消退出血を起こしうる無月経すなわち体内のエストロゲンの作用により子宮内膜がある程度形成されていることが判ります。
(卵巣からエストロゲンが分泌されていることがわかります。)
第2度無月経:黄体ホルモン投与により消退出血を起こさない無月経エストロゲン投与を行うと出血が起こります。
(エストロゲン投与にても出血が起こらないものは末梢性無月経)
原発性無月経(18歳をすぎても一度も月経のおこらないもの)のさまざまな原因

1、 染色体異常
原発性無月経の原因として最も多く認められるものです。その中でもTurner症候群や精巣性女性化症が多くみられます。卵巣機能のに対し重要な働きをする遺伝子の多くはX染色体上にあるので、この遺伝子の欠失や異常があると卵巣機能が正常に働きません。
2、 中枢性異常
視床下部・下垂体の異常によるものです。染色体異常についで原因として多く認められるものです。ただし、異常の程度が軽い場合は続発性無月経になります。
3、 卵巣異常
卵巣の機能(ホルモン分泌能)がなんらかの原因で働き始めるのが遅いと無月経になります。しかしこの原因による原発性無月経のほとんどは、しばらくして月経をみます。
4、 性管分化異常
子宮や膣の発生の異常で、低形成や無形成をおこすものです。症状の軽い処女膜閉鎖から子宮・膣の完全無形成まで、さまざまな程度があります。4000-5000人の女性に1人程度の割合で認められます。
5、 副腎性器症候群
コルチゾ−ルなどの副腎皮質ホルモンが過多であると、視床下部脳下垂体系の機能異常をおこしたり、卵巣局所に作用してホルモン分泌を抑えたり、子宮内膜の剥離を抑えたりします。
(続発性無月経:最初、月経がみられたものが途中で無月経になったもの。)
ここではわかりやすいように中枢性無月経、卵巣性無月経、子宮性無月経およびそれ以外の原因による無月経に分けて説明します。
中枢性無月経:視床下部下垂体機能の障害によるものです。

1、視床下部の障害
 視床下部からは周期的にLutenizing hormone releasing hormone(LH-RH)が分泌されていますが、なんらかの原因によりこの分泌が低下したり、亢進しすぎたりすると、下垂体からのゴナドトロピン分泌が低下したり、恒常的に亢進したりします。これが無月経につながります。

LH-RHが低下する病態としては
  • 神経性食欲不振症;ただし脳下垂体にも反応低下が認められ、LH-RH負荷試験で低反応を来すことが特徴です。
  • 体重減少性無月経
などがあります。
LH-RHが亢進する病態としては
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS);ただし、PCOSの特徴である高アンドロゲン血症の原因がどうして起こるかははっきりしていません。
などがあります。

2、脳下垂体の障害
 脳下垂体の機能が障害されると無月経になります。代表的なものとしては前述の分類にあるようなSheehan症候群やSimmonds症候群です。
  • Sheehan症候群;分娩時の大出血などにより脳下垂体の虚血を来たし、下垂体前葉の壊死がおこり下垂体機能低下となったものです。
  • Simmonds症候群;脳下垂体腺腫や癌の視床下部・下垂体への転移や梅毒・結核などにより脳下垂体前葉の機能低下を起こしたものです。
 脳下垂体前葉からプロラクチンの産生亢進がおきることによっても無月経になります。高プロラクチン血症は無月経の中でも10-30%を占めていて最大の原因とも言われています。高プロラクチン血症がどのように無月経を引き起こしているかは今だ判明していません。しかし、高プロラクチン血症ではLHの律動的分泌が減少していることがわかっています。
  • Forbes-Albright症候群;プロラクチン産生下垂体腺腫により高プロラクチン血症となるもの。
  • Chiari-Frommel症候群;産褥後長期間授乳を続けていたために断乳後も高プロラクチン血症が続くもの。
<卵巣性無月経;卵巣機能の障害によるものです。>
 Turner 症候群のような染色体異常と違い、放射線によるもの以外病態はほとんど不明です。原因としては
  1. 自己免疫による卵巣障害;病態は不明
  2. 放射線や薬剤による卵巣障害
  3. 感染がおこることによる卵巣障害;病態は不明
  4. 全くの原因不明(特発性)
などがあります。

<子宮性無月経;子宮の機能の障害によるものです。>
 非常に稀ですが、感染や外傷などにより、子宮内腔が癒着することによって月経がおこらないものです。

<視床下部下垂体、卵巣、子宮以外の原因による無月経>
 甲状腺ホルモンの異常すなわち甲状腺機能の異常により視床下部下垂体のコントロール機能が障害されて無月経が引き起こされることがあります。
 副腎皮質の機能亢進症や低下症によっても副腎皮質ホルモンの異常により、視床下部下垂体のコントロールが障害され無月経になることがあります。

(無月経に関連した特徴的な先天異常)
  1. Turner 症候群(XO, XXqi, XXq-, XXpi, XXp-など)
  2. 超女性:super female(XXX, XXXX)
  3. 精巣性女性化症候群(XY)
    体型は正常の女性であるが核型はXYであり、テストステロンに対する受容体不全が指摘されています。
などです。

 <多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovarian Syndrome : PCOS)>
多嚢胞性卵巣症候群は文字通り、卵巣に多数の小さな卵胞が真珠のネックレス状にできる疾患です。なかなか大きな卵胞が発育しなくて、排卵が起こりにくく、月経不順や無月経の原因になります。多嚢胞性卵巣症候群は、生殖年齢の女性の5-10%に認められるといわれています。
 多嚢胞性卵巣症候群の特徴は
  • 無数の小さな卵胞が卵巣内に発育する。
  • 月経不順や無月経をおこす。時に、過多月経や月経困難症の原因となる。
  • 排卵がおこりにくいために妊娠しにくい。
  • 体重が増加気味の方(患者様)がいる。(欧米では50%)
  • にきびができやすいことがある。
  • 血中コレステロールや脂肪酸などが高いことがある。
  • 多毛のことがある。(欧米では70%、日本では10-20%)
などです。
 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因はいまだ解明されていません。体質的(遺伝子的)な問題や環境的な問題が関係あると考えられています。欧米の肥満気味のPCOSの患者様の3分の1に耐糖能異常があり、7.5%-10%がtypeIIの糖尿病に罹患しているといわれています。インシュリン抵抗性の糖尿病気味の方や高インシュリン血漿の方はPCOSになる確率が高いといわれています。また、副腎皮質や卵巣においてアンドロゲン(男性ホルモン)産生の調節を行うCYP17という酵素コントロールがおかしいとも言われています。
 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の内分泌学的特長は
  • LH(脳下垂体前葉からのホルモン)のレベルが高いこと。特にFSHと比較すると高いこと。
  • 男性ホルモンである血中テストステロン、アンドロステネジオン、デヒドロエピアンドステロンなどが高いこと。
  • 約25%に脳下垂体前葉ホルモンであるプロラクチンにも異常をきたすことがあるということ。
  • 高インシュリン血漿を示す症例があるということ。
  • 過エストロゲン状態になりやすい。
などです。
治療法に関しては、患者様のニーズに即して行うことになります。つまり、
  • 妊娠したい方 → 排卵を起こすようにする。
  • 単に月経を順調にしたい方 → ホルモン療法を行う。
  • にきびや多毛を治したい方 → ホルモン療法を行ったり、卵巣からのアンドロゲン産生を抑制する。
などの、ご希望のにあった治療を行います。
ただし、特に治療の希望がないからといって、治療をせずに無排卵の状態がかなり続き、高温期(黄体ホルモンによる子宮内膜の脱落膜化がおこる時期)がないまま過エストロゲン状態でずっと放っておくと子宮体癌の発生率が高くなるとも言われています。

<<生理痛>>
医学的には月経痛もしくは月経困難症といいます。
月経痛が病的なものかを判断する目安は、初経(一番最初の月経)から振り返ってみて、月経痛がひどくなってきているか、それともあまり変わらないか、また、月経周期は不順になってきたのか、それとも逆に年をとって規則的になってきたのか、その他、月経量は多くなってきたのか、それともあまり変らないのかということです。つまり、月経痛がだんだんひどくなってきているか、もしくは急にひどくなった場合は病的なものが多く、ある程度月経痛が強くても昔からあまり変わらない場合は器質的な病気がない場合が多いものです。また、月経周期が急に不規則になった場合には機能的な問題が認められることが多いものです。月経量が徐々に多くなってきた場合は、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの器質的疾患や血液疾患などが考えられます。

代表的な器質的な問題や機能的な問題を挙げますと
 器質的な問題 − 子宮内膜症、子宮付属器炎、骨盤内感染、子宮筋腫、子宮内膜ポリープなど
 機能的な問題 − 卵巣機能不全による破綻出血、精神的な問題(不安神経症、うつ病、自律神経失調症など)など
があります。
頻度別にしますと、月経困難症の3大器質的原因は
 ・子宮筋腫 ・子宮内膜症 ・子宮付属器
の感染です。子宮筋腫は過多月経による子宮内圧の上昇や月経時の子宮の収縮痛を感じやすいといわれています。また、筋腫自体や回りの組織が炎症をおこしていることもあります。子宮内膜症は子宮内腔以外(子宮筋層や腹腔内)で月経様の出血をきたすことによります。また、子宮付属器の感染に関しては、炎症が起こっているために月経痛が強くなります。非常に蔓延している性病の1つであるクラミジア感染症なども、ほとんど無症状ながら、月経痛だけが強くなってきたということもあります。
 その次には
  • 子宮内膜ポリープ(月経量が増えるために子宮内の緊張が高まる。)
  • 子宮頚管の狭小(子宮の出口が狭いと、子宮内の出血がすぐに外に出ないで子宮内の内圧と緊張が高まる。このタイプは出産すると月経痛が軽減されやすい。)
  • 子宮の過前屈や後屈(子宮が折れ曲がっているために、子宮頚管が狭くなり、月経時の子宮内圧が高まる。)
  • 月経不順、排卵障害(排卵が起こらないと、子宮の内膜はエストロゲンの影響でいつまでも増殖期となり、子宮の内膜が厚くなりすぎて出血が多くなり、子宮内圧が高まる。)
  • 精神的、肉体的ストレス
  • 精神神経障害
などです。
 月経の時、膣から出血が出はじめるのは、実際、子宮の中で子宮内膜がはがれ始めてから、半日〜1日たってからのことがよくあります。つまり、子宮の中で内膜が剥がれ、子宮が風船のように膨れ上がり、子宮の内圧が高まって、その後子宮の出口から出てきます。従って、月経痛が月経前後(半日〜1日)に一番強くなるのはこのためです。その後、出血が多くなってくると、子宮が収縮するために、2日目ぐらいからは収縮痛を感じるようになります。ですから、子宮の入り口(頸管)が狭いと月経痛が強くなります。また、出血の一部は、卵管を通って腹腔内にもでてきますので軽い腹膜炎状態になります。

 病的な問題がない月経でも、もし、それが患者様の日常生活上支障になるようなら、それに応じた対応をしますので、遠慮なくおっしゃってください。

<<月経前症候群>>
月経前症候群は月経直前に不安・緊張・頭痛・イライラ・腹痛などをきたす疾患です。ホルモン変化に対して身体の反応がおこる機能的原因が多いのですが、突然起こるようになったり、だんだん強くなるような場合は、器質的な疾患が存在していることがあります。婦人科受診をお勧めします。また、機能的な場合でも、労働や勉学などに支障が出るようならばコントロールすることが可能なので、ご相談ください。

婦人科(癌)検診
子宮癌というものには、子宮の出口部分にできやすい子宮頸癌と子宮の中にできやすい子宮体癌があります。無症状の場合には、細胞診により細胞をこすり取って検査しますが、不正出血などの症状が認められ、癌や前癌病変の可能性の高い時には、組織を削り取って検査を行います。
卵巣癌は無症状なことが多く、超音波や腫瘍マーカーを用いて検診します。
乳癌検診は触診および超音波にて検査を行います。必要があれば、乳房のX線を検査することがあります。


子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫の検診および治療
これらの疾患は婦人科疾患の中でも非常にポピュラーなものです。
子宮筋腫や子宮内膜症は良性疾患ですが、ひどくなると貧血や腰痛や月経困難症を引き起こします。また、不妊の原因にもなります。ただ、手術が必要なものはごくわずかで、あとは保存的に経過観察や治療を行えます。
卵巣腫瘍(嚢腫)は、良性のものと悪性のものがあります。割合からいえば良性のものが圧倒的に多く、中には自然になくなってしまうのもあります。良性の卵巣嚢腫の代表的なものには
  • 機能的卵巣嚢腫(単純嚢胞) − 排卵して破れるはずの卵胞が、排卵せずにそのまま残ってしまったときにおこるものが多いと言われています(黄体化非破裂卵胞とも言われています。)。自然に消失してしまうのも多いものです。ただし、捻転や破裂を起こすと急な腹痛(激痛)がおこることがあります。膣から嚢腫内容を抜いてしまうと予防になります。
  • 子宮内膜症性卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫) ― 子宮内膜症が卵巣におこり、嚢胞化したものです。中にはチョコレート色の古い血液が溜まっています。不妊症の原因となります。破裂をおこして腹膜炎症状をきたすことがあります。
  • 類皮嚢胞腫(嚢胞性奇形腫やデルモイド腫瘍ともいいます。)− もともとは卵細胞が単為発生してできたものだと言われています。つまり、本来は卵細胞は卵管で受精して子宮に入って人間となりますが、受精もせず、卵巣内で勝手に発生してしまったいわゆる人間の出来損ないが嚢腫になったものです。中に髪の毛や脂肪や骨が認められます。この卵巣嚢腫は破裂や捻転をおこして腹膜炎や激痛をおこすことがあります。
  これらの良性の卵巣嚢腫は日本では1-2週間入院して手術することが一般的ですが、欧米では程度により日帰りや一泊入院ぐらいで治療することもよくあります。当院ではこの方法を用いて、できるだけ患者様の負担を軽くすることを提案しています。
 超音波などの画像診断や腫瘍マーカーにて悪性が疑われるような卵巣腫瘍については、術後の治療が必要なこともあり、提携病院での治療を紹介させていただきます。


思春期、更年期相談
 思春期における月経の悩み、帯下(おりもの)の悩みなどに対応します。また、近年性交渉がかなり低年齢化しています。感染症(性病)や妊娠の相談があればおっしゃってください。
 ホルモンの急激な低下によりおこる更年期障害(ほてり、冷や汗、頭痛、不安、肩こり、体調不良)は、非常につらいものです。特に社会進出をされ、毎日のお仕事をこなされる女性にとっては、更年期障害には悩まされるものです。若い時のようにバリバリ働きたいと思っていても、身体がいうことをきかないとどうしようもありません。定年までは若々しく生き生きとしていたいものです。当院では、このように症状のある更年期障害に対して治療を行っています。また、骨粗鬆症などに関心がある患者様がいらっしゃる場合は随時ご相談ください。


避妊相談
 働く女性も多く、また、昨今の社会情勢では、未婚・既婚を問わずファミリープランニングに関心のある女性が増えてきました。積極的に自分達の人生を考えることも、また一つの重要な生き方です。自分達にあった避妊方法を見つけて下さい。

性相談・感染症治療
 性に対する正しい知識を得たいという女性はご相談ください。また、本などを読んでもわかりにくいところがあるという方はご相談・ご質問ください。
性病はいつ何時かかるかわかりません。というのも、患者様自身に問題なくても、患者様のパートナーに問題がある場合や、パートナーがどこからか病気をもらってくることもあります。もし、帯下や痒み、またヒリヒリ感や腹痛などがあって心配な場合はご相談ください。
*性行為感染症(STD)
性行為感染症は文字通り、性交によって感染する病気です。性行為によって感染する細菌やウイルスには特徴があります。経口的に摂取しても、消化管(胃内や腸内)で生存できないような細菌やウイルスまたスピロヘータ−がその主役となります。また性器は直接相手と接する時間が他の身体の器官のどこよりも長く(20分以上キスをしている人はあまりいません)、行為中には分泌液が出ることによって細菌の発育をより助けることになります。しかも、それぞれの表面は扁平上皮に覆われていながらも、湿気が多いためにあまりバリヤの働きをしていません。また一部に粘膜(子宮頸管や尿道)も露出しています。口腔内にはIgAを主体とした免疫が分泌されていますが、膣内にはほとんどありません。強い免疫は生殖に不利に働くからかもしれません。その他にも下記のような特徴があるものが性行為感染症となりやすいと思われます。
  • 精液や膣分泌液に分泌されやすい。
  • 湿り気の多い膣内で発育しやすい。
  • 尿道や子宮頸管を通して上向性に感染しやすい。
  • 精嚢内で発育しやすい。
  • 初期症状、特に痛みが出にくいもの。(つまり、自分の感染がわからずに次の人と性行為をしてしまう病原体の方が広まりやすいということです。)
最近は性の乱れから性行為感染がひそかに増加しつつあります。現在の性行為感染症のトップはクラミジアトラコマチスであり、数は少ないけれども根本的な治療法がないために一番巷で恐れられているのはHIVです。
(代表的な性行為感染症)
  • クラミジアトラコマチス感染症
    [原因菌]Chlamydia trachomatis (クラミジアトラコマチス;細胞内寄生細菌)
    クラミジアトラコマチスは、女性の感染初期は無症状なことが多く、男性でも無症状であることも多いといわれています。また、細胞内寄生細菌であり、中―長期的な抗生剤の投与を行なわなければ、根治しにくいという面ももっています。つまり、クラミジアを同定せずに、短期的(4−5日)に抗生剤の投与を行なった場合、症状は軽快しますが、クラミジアそのものはまた再発する可能性が高いということです。これらが、このクラミジア感染を蔓延させる原因となると思われます。
    女性の多くは無症候です。下腹痛、帯下などが認められることがあります。尿道炎を起こすと排尿時痛が出現します。ひどくなると骨盤腹膜炎(PID)を引き起こします。卵管炎、卵管閉塞、不妊症の原因になります。

  • 淋病
    [原因菌]Neisseria gonorrhoeae(グラム陰性双球菌)
    この淋菌は感染力が強いために性行為感染症として広まりやすいのです。
    淋菌は男性には症状が出やすいですが、女性には膣・子宮頸管内の感染だけでは比較的初期症状が出にくいという特徴があります。しかし、感染が広まり、子宮内膜や卵管また尿道にも感染すると男性同様の症状が出ます。
    膿性帯下、外陰掻痒感、下腹痛などが症状です。膀胱炎を併発すれば排尿痛・頻尿をおこします。
    骨盤腹膜炎や付属器炎を引き起こします。卵管閉塞や骨盤内癒着をおこして、不妊の原因となります。

  • 梅毒
    [原因菌]Treponema pallidum (スピロヘータ;グラム陰性菌)の感染
    梅毒は感染初期に無症状(無痛)なことが多いため、知らないうちに他人に感染させてしまうことが多いと思われます。感染局所に硬性下疳が出ることがありますが、無痛性で、しかも潰瘍ではないので化膿することもなくあまり気にしない患者も多いと思われます。
    感染当初は無症状です。その後、リンパ節腫張や硬性下疳(硬結の表面の潰瘍)、また、バラ疹などをおこします。
    皮膚および粘膜面の無痛性の発疹などをきたし、晩期(第3期)には、麻痺性痴呆・脊髄癆などに至ることがあります。

  • ヘルペス感染症
    [原因ウイルス]Herpes simplex virus (II型が多い。)
    症状は激しいのですが、感染力が強いために広まりやすいと思われます。また、治ったように思えても、神経節に潜伏して再発を繰り返すことも多く、なかなか根治が難しいことも広まりやすい原因の一つと思われます。
    外陰や腟に有痛性の小水疱を生じます。潰瘍を形成することがあります。

  • 腟トリコモナス症
    [原因寄生虫]Trichomonas vaginalis(原虫:寄生虫)
    結構頻度が高い病気です。かなりの痒みをきたすことがあります。
    膣内の環境がトリコモナスの発育に非常に適していること、また男性女性を問わず無症状なことも多いことから広まりやすいと思われます。
    外陰掻痒感、帯下(おりもの)、異臭などが主な訴えです。無症状なこともあります。

  • 尖圭コンジローマ
    [原因ウイルス]human papilloma virusの感染により引き起こされます。まあ外陰の“いぼ”です。多発することもよくあります。ひどくなるとカリフラワー状になります。

  • HIV(エイズ)や肝炎
    性行為によってHIVや肝炎ウイルスに感染することがあります。ただし、これらの疾患に関しては劇的に効果のある治療法がなく、感染しないようにすることが第一です。

  • カンジダ膣炎
     カンジダとはCandida albicansという真菌により引き起こされる感染症です。簡単に言えば膣の水虫みたいなものです。カンジダは普通の皮膚にも巣くうことがあり、(主に)性行為で感染する性行為感染症とは言えないのですが、性行為でピンポン感染を引き起こします。というのは、もし女性の患者様がカンジダ膣炎になっていて、膣内の消毒や薬の投与を繰り返して治しても、性行為の相手(パートナー)の性器にカンジダがついていれば、治ってもまた感染してしまうということです。特に、男性の方が包茎や仮性包茎の方などは皮と性器との間に巣くうことがあり、性行為を行うと皮がめくれて中に入るために、またカンジダが注入されてしまうことになります。もし、固定したパートナーがいらっしゃるなら、必ず相手にも塗り薬をつけていただくことが重要です。特に仮性包茎の方は皮をめくって中に塗っていただくことが必要です。女性においても、体質的になりやすい方となりにくい方がいらっしゃいます。その他、糖尿病や妊娠中、また、身体の免疫機能が落ちているときや、風邪をひいているとき、また抗生剤を服用しているときなどになりやすい傾向があります。

ブライダルチェック
結婚前に積極的に自分の身体のこと(特に生殖機能など)を調べておこうという女性が増えています。もちろん秘密は厳守です。積極的にお考えのかたはご相談ください。
「結婚してもすぐ赤ちゃんができるのだろうか、また、妊娠しても問題がない身体だろうか。」あれこれ考えるだけで悩まずに、しっかりと自分を見つめて人生設計たててください。もちろん秘密は厳守です。積極的にお考えのかたはご相談ください。
基本ブライダルチェック
  • 子宮、卵巣の形態的異常の有無。(子宮筋腫や卵巣腫瘍などの有無を含みます。)
  • ホルモン状態の異常の有無。
  • 婦人感染症の有無。
  • 子宮内膜症の有無。
  • 卵管の通過性の有無。